季節は巡る【小説再掲】(600文字程度)
大学一年の夏。サークルで行く小旅行の準備をしていると、数ヶ月ぶりに旧友から連絡が来た。
『やっほー、元気?突然だけどさ、実は私、最近彼氏が出来たんだ』
男女交際的な意味で付き合ってはいなかったけれど、高校時代、同学年の彼女と僕は良い雰囲気だった。そんな風に僕だけが思っていたら少し切ないけれど、ともかくそんな距離感の彼女が、電話口で僕に告げた。
僕は彼女に恋をしていた、と思う。しかしその気持ちが、もう既に過去形に変わっていたことに気付く。
当時はあれほどの熱量を費やしたのに、今はもうその報告をフラットな気持ちで聞けるぐらい『好き』という感情がすっからかんになってしまったようだった。そう思うと、少しだけ落ち込んだ。環境の変化というものは、こうも強い力なのかと思わされる。
恋人が出来た彼女と同様、僕にだって環境の変化に伴う心の移ろいはあるのだ。
しかし、変わることは悪いことではない。いつまでも変わらないものが、美しさの全てではない。
変化し、進歩してゆくのもまた、美しさだ。
『そうなんだ。おめでとう』
だから僕は、そうやって彼女を祝福することが出来た。今は素直に、僕も頑張ろうと思える。そんな現状に後悔はしていないし、尊いとさえ思う。
そしてもしこの先、彼女と再会する機会があれば、積もる話で盛り上がろう。
それが、季節が巡るということなのだろう。
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※この作品はSS名刺メーカー( https://sscard.monokakitools.net/index.html )で作成した文章をTwitter( @angro_i_do )上にアップし、それを加筆・修正したものです。