『麦本三歩の好きなもの/住野よる』読んだ本の話
こんばんは、あんぐろいどです。
今日は読書感想文です。
『麦本三歩の好きなもの/住野よる』
を読みました。
大学図書館勤務の20代女子、麦本三歩(むぎもと さんぽ)の日常を描いた小説。
この作品を通して一番に思ったのが、
これに尽きます。
主人公がとにかくキュート。
キュートと言っても、数多の男を手玉に取るような魔性の女って感じではないです。
噛んだり言い間違えをしたり、仕事でやらかしたりはしょっちゅう。どちらかと言うと『天然』とか『ドジっ娘』みたいな意味で使われる『キュート』です。
作品名の通り、この物語では主人公の三歩が好きなものがたくさん出て来ます。
三歩がそれらに触れる時の心理描写がこれまた軽快。読んでるこっちまで幸せになってくる。俺もラーメンとかたい焼きとか食べたくなってくるよ。
可愛らしくてピュアな彼女ではありますが、決して徹頭徹尾、純真無垢や清廉潔白なわけではなく、気に食わない相手をぶっとばしたいと思うこともあるし、ずるをすることもある。仕事をサボった時の罪悪感とかすげー分かるよ。
でもそれは別に罰せられるべき悪いことではないよね、みたいなことを本を通して教えてもらったり。
好きなものに対してのるんるんとした気持ちや三歩が苦手なものに恐怖している描写が作中にたくさんあって、読者の中に強固な『麦本三歩像』が出来上がってくる。
この世のどこかに、本当に彼女がいる気がする。
周りの人々も魅力的。
職場内では3人の女性の先輩が主要キャラとして登場。
怖い先輩。優しい先輩。おかしな先輩。
三歩が心の中でそう呼んでいるように、怖い先輩は恐ろしいし、優しい先輩は包容力があるし、おかしな先輩は何を考えているか分からない。
そんな先輩たちも、三歩と職場以外で接点を持ったエピソードでまた違った印象を見せます。
詳しくは実際に読んで頂けたらなと思いますが、これって現実にも起こり得ることですよね。
普段厳しい人がふとした時に見せる甘い顔だったり、普段穏やかな人が他人からは想像が付かないほど心の奥に熱いものを秘めていたり。
『幽☆遊☆白書』のオープニングテーマにもありましたありました。
その他にも大学時代からの美人の友達と温泉旅行に行ったり、仲の良い男友達と遊びに行ったりして、物語に華を添えてくれます。
この物語では基本的に平穏な日常が流れていくのですが、ふとした時に事件が起こったりもします。
そういう場面で彼女が何を思い、どんな言葉を人に掛けるのかというのも見て頂きたいです。
上記のように時々、読者が感情を揺さぶられる出来事が起こったりしますが、やはり今作品のベースは『主人公の日常』が主題になってます。
作者の前作品、
『君の膵臓をたべたい』
『また、同じ夢を見ていた』
『よるのばけもの』
『か「」く「」し「」ご「」と』
などと比較すると、今作はフィクションとして映える展開はどうしても控えめになってしまっていると思います。それがメインの作品なので、しょうがないと言えばしょうがないのですけどね。
特に、いじめの描写に生々しさがあった『よるのばけもの』と比べると、これまたすごく世界観に幅があるなあと思います。こちらもオススメです。
(ちなみに『青くて痛くて脆い』はまだ序盤しか読めてません)
なので今作は、フィクションに対して波乱万丈な事件や高度なミステリー性を求めている方に自信を持って薦めるような作品ではありません。
しかし、日頃忙しなく働いている大人の方々にぜひ読んでほしい一作です。
この物語を通して皆さんの日常からも、いつもとは一味違ったきらめきを感じることが出来るーーかも。
というわけで、『麦本三歩の好きなもの/住野よる』の読書感想文でした。
少しでも興味を持って頂けたら嬉しいです。
それでは、あんぐろいどでした。
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